認知症予防を始めるタイミング
2012年時点の認知症患者は約460万人で、全高齢者のうち約15%を占めています。これが2025年には20%が認知症になるという推計もあります(平成29年度高齢者白書より)。認知症は治療法がまだ確立しておらず、なってしまった後では健康な状態に戻せる可能性は低くなります。そういう意味で認知症にならないように予防することが大切で、なかでも取り組みを始めるタイミングを見極めることが重要です。
MCI(軽度認知障害)の段階で予防を
認知症はある日突然、発症する訳ではありません。徐々に認知機能が低下していき、認知症に至ってしまうのです。また、認知症は治療法が確立されていないので、一度かかると完治は難しいといわれています。
認知症になるプロセスは、上の図のように健常からMCI、認知症と徐々に進行します。健常と認知症の間にあるMCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)とは、認知症の一歩手前の状態で、正常な状態と認知症の中間と言えます。「軽度認知障害」というと軽い認知症と思われるかもしれませんが、あくまでも「認知症の手前」であって認知症ではありません。
参考:
「認知症疾患診療ガイドブック2017」(日本神経学会)
「国立長寿医療研究センター調査」
MCIを放置していると、年間10~15%の人が認知症に至ってしまうという研究結果があります。一方で46%の人がMCIから健常な状態に回復したという事例もあります。回復した人をみると次のような傾向がありました。
●日頃の生活習慣(運動や食事など)を見直した
●認知症予防に関する講習などに参加するなど、人との交流を図っている
認知症を早期発見するメリット
MCIの段階で早期発見ができた場合、どのようなメリットが生まれるのでしょうか。
早期発見のメリット①
「将来の希望を伝えることができる」
認知症の症状が重くなってしまうと、自分の意思を伝えることが難しくなります。MCIの段階で発見することができれば、万が一、認知症になってしまったときの対応方法を家族や周りの人に伝えておくことができます。
たとえば、
・財産の管理について ・介護はどこでしてほしいか(自宅、施設、サービスなど)
・葬儀の形 ・財産処分(遺言書の作成) など
早期発見のメリット②
「個人情報を整理できる」
個人情報には親族や友人・知人などの連絡先をはじめ、保険証、年金手帳、通帳の管理など、さまざまな種類があります。最近では、オンラインのみで取り扱う銀行口座や、SNSのパスワードなど、インターネット上のみでやりとりする個人情報も多いので、ノートに書き留めておいてください。
早期発見のメリット③
「認知症予防ができる」
認知症の予防法は、「頭の運動(脳トレ)」「食生活の改善」「身体の運動」「質の良い睡眠」などが効果的だと言われています。これらの予防法は、認知症になってからでは難しくなり、本人が健康で認知機能が充分なうちに始めることがおすすめです。
★「グー・チョキ・パー体操」で認知症予防
グー・チョキ・パー体操は、グー・チョキ・パーを順番に繰り返しながら出す体操です。グー・チョキ・パーと繰り返して出していくことで脳へ良い刺激を与え、認知症予防に効果的です。
① はじめは右手を前に突き出し、「パー」にします。左手は胸につけて「グー」にします。
② 前に突き出す手を入れ替え、突き出した方の手を「グ―」にします。
※だんだんとスピードを速くしてみましょう
●突き出した手「パー」、胸の手「チョキ」
●突き出した手「チョキ」、胸の手「パー」と手を変えていきます。
童謡の「うさぎと亀」を歌いながらリズムよくやってみると、より効果的です。
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監修:一般社団法人 日本認知症予防協会