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ケアマネジャーさんの知恵袋 ~日々のケアを彩るヒント集~
【Vol.1】元気な毎日のための加齢ケア

【Vol.1】元気な毎日のための加齢ケア

このコーナーでは、ケアマネジャーさんが高齢者のケアにおいて直面する様々な課題に対する理解を深め、質の高いサポートを提供するための基本的な指針を提供することを目的としています。今回は誰もが直面する「加齢」をテーマに、加齢から起こる高齢者の身体的変化をはじめ、さまざまな視点から変化を理解し、加齢に対する向き合い方などについて、考えていきましょう。

(1)加齢と向き合う

めまい、物忘れ、難聴、息切れ

加齢とは、「年齢を重ねること」ですが、高齢者にとっては、身体的な変化はもちろん、心理的な変化や社会環境の変化などを経験することで、加齢は単に年齢を重ねるだけの状況ではありません。身体的な変化は、一言で表すと「運動やストレス時に必要な予備能力の低下」ということができます。これはさまざまな状況の変化に対して、臨機応変に対応することができなくなるということです。このように加齢に伴う生活の自立度低下の衰えから現れる症状を「老年症候群」といいます。

男性と女性のイラスト

老年症候群は、筋力や動作力の低下、食欲の低下、低栄養状態になるなど、複数の症状を伏せ持つことで、悪循環を招くことになる場合が多く、やがて要介護状態へとつながっていきます。この悪循環を早期に断ち切り、高齢者一人ひとりがその人らしい尊厳ある生活を送れるように、好循環へとつなげていくことが重要です。介護支援専門員(ケアマネジャー)は、その好循環へ向けての支援を行っていきます。

適切なサービスを提供し、要介護状態になることをできる限り防ぎ、要介護状態になった場合でも、状態がそれ以上悪化しないようにすることが求められています。身体的・心理的変化はもちろん、社会環境の変化を包括的に捉え、それらに対応することがケアの質を左右してきます。加齢による変化を理解し、受け入れることで、高齢者一人ひとりの可能性を最大限に引き出しましょう。

(2)運動で活力を

高齢者にとって運動機能の低下は、日常生活の質の低下につながります。定期的な運動は、高齢者の身体機能維持に欠かせません。運動は、身体機能の維持のほか、ストレスの解消や認知機能の維持にもつながります。 筋力や基礎体力、免疫力といった今ある機能を少しでも維持することで、様々な疾患を予防したり、ケガによる骨折や転倒を防ぐことが重要です。特に高齢者では、有酸素運動や筋力トレーニングのほか、身体のふらつきを防ぎ、バランスを維持するためのトレーニングもなども組み合わせた運動が効果的だと言われています。運動前には、必ず本人の体力や体調を考慮して行いましょう。

テーブルを使って運動をする女性のイラスト

高齢者が運動プログラムを行う際は、一人ひとりの身体状況が大きく異なるため、体力レベルや普段の身体活動、疾病など、個々の状態に合わせた形で目的や目標を設定し、徐々に進めていくことが重要です。運動プログラムを継続できるよう、最初から負荷を高くするのではなく、運動の強度や時間を控えめに抑えながら、徐々に運動の頻度を上げていくことで、安全に効果を上げていくことができます。体力に合わせた内容で無理なく行いましょう。

加齢に伴い筋力の低下や筋肉量が減少するサルコペニアや、運動器の障害などにより要介護のリスクが高い状態になるロコモティブシンドローム(通称:ロコモ)など、安全確保に気をつけ加齢による運動器の機能不全に陥らないよう、日頃からの運動で毎日を元気に過ごすことは、大変重要です。

(3)栄養で健康を支える

加齢によって、筋肉量や内臓機能の低下、活動時のエネルギー代謝量が低くなることで、基礎代謝量も低下します。また、食べ物を嚙むこと(咀嚼する力)や飲み込む力など、食事に関する機能も低下します。それらの変化に伴って、一人ひとりの状況に応じた栄養に対するニーズも異なってきます。そこで健康を維持するために考えたいのが栄養です。

タンパク質などの栄養のある食材のイラスト

食事は健康の基本であり、栄養は人間の生存活動に欠かせないと言っても過言ではありません。食欲がないからと食事を抜いたり、不規則な食生活を繰り返すと、身体や機能を維持するための栄養が不足し、低栄養に陥ります。バランスの取れた食事は、健康を維持し、病気を予防する基盤となります。

必要な栄養摂取を考えるうえで、特に高齢者の場合は、たんぱく質が不足しないように気を付けるましょう。たんぱく質の不足は低栄養を招きやすいので、1日3回の食事でたんぱく質が豊富に含まれる肉や魚、大豆製品を積極的に取り入れましょう。また、女性においては骨粗鬆症(こつそしょうしょう)予防のため、食事だけでなく、間食として牛乳や乳製品を摂ることも有効です。

食事をする女性と男性のイラスト

また、ビタミンや亜鉛などのミネラルを摂取することは、免疫機能や身体の調子を整えるうえで必要な栄養素です。日々の食事では、和食の「一汁三菜」に代表されるような、バランスのとれた食事メニューを心がけ、1日に必要なエネルギーやたんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルを補えるようにすることがとても重要です。おいしく安全な食事を口から食べることが、低栄養の予防になります。

(4)心のケアを忘れずに

心のケアを表したイラスト

高齢者における心の健康は、身体の健康と同じくらい重要です。高齢になると身体的な不調が現れやすくなると同時に、退職により社会との関わりが無くなったり、親族との死別、健康への不安、経済的な不安などから、精神的にも不安定になりやすくなります。また、少子化や核家族化が進んだことで、一人暮らしの高齢者が増加傾向にあり、近所付き合いも希薄な現代においては、社会的な孤立が問題となっています。社会的な孤立を避け、ストレスを適切に管理するためにも、趣味や余暇の楽しみを作り出したり、社会活動に参加するなど、コミュニケーション機会の増加や、その人の生きがいにつながるような活動をサポートすることが重要となってきます。

【心の健康維持に有意義なもの】

カラオケを楽しむ女性と男性のイラスト
  • ● 趣味や余暇の活動を通じて刺激を得る
    例)
  • ・旅行先で美しい景色に感動する

    ・友人とカラオケで好きな曲を歌う

    ・美味しいものを食べに外出する

  • ● 生活の中で目標を設定する
    例)
  • ・散歩やジョギングなどを日課にする

    ・新しいものにチャレンジする

俳句を詠む女性と男性のイラスト
  • ● 社会とのつながりを持つ
    例)
  • ・地域活動に参加する

    ・ボランティア活動に参加する

    ・習い事をはじめる

シニア世代といえば、「第二の人生」や「余暇を楽しめる時間」といったポジティブなイメージを抱きがちですが、ライフステージの変化に伴って、心の健康を乱しやすい時期でもあるため、高齢者の心のケアをサポートし、心の健康を良い状態に保つことが大切です。

(5)活動で生活を豊かに

単身の高齢者が増え続ける中、高齢者の孤立や孤独を防ぐためにも、社会活動など「人と人とが関わり合う機会」が必要とされています。社会活動とは、就労だけではなく、ボランティアや町内会などの地域社会活動をはじめ、趣味や習い事なども含まれます。厚生労働省の「平成30年(2018年)高齢社会白書」によると、社会活動に参加した人が「活動をしていてよかったこと」として最も多かった回答は、「新しい友人ができた」でした。次に「地域に安心して生活するためのつながりができた」というもので、半数以上の参加者が活動を通じて「人とのつながり」という点で参加のメリットを実感していました。また、「充実感が得られた」「健康維持や身だしなみにより留意するようになった」という回答も3割を超えており、心身ともに前向きな変化も見られます。

また、健康状態が「良くない」人は、社会活動率が低いことが明らかになっています。社会活動に参加しにくい環境などから不活発になり、ますます健康状態が悪化するという悪循環が生じることがないように、健康状態が良くなくても気軽にかつ安全に社会参加できる環境づくりも、重要なのかもしれません。

社会活動は、高齢者にとって心の豊かさや生きがいを与えるとともに、日々の健康維持にもつながります。

[主な社会活動の内容]

環境美化地域清掃のイメージイラスト
  • ● 健康・スポーツ
  • (体操・ウォーキング・ゲートボールなど)

  • ● 趣味・余暇
  • (カラオケ教室・習い事・俳句・陶芸など)

  • ● 地域行事
  • (祭りなど地域行事や催し物の世話など)

  • ● 生活環境改善
  • (環境美化・緑化推進・まちづくりなど)

  • ● ボランティア活動
  • (清掃活動・登下校見守りなど)

  • ● 生産・就業
  • (園芸・飼育、シルバー人材センターなど)

  • ● 安全管理
  • (交通安全・防犯・防災など)

  • ● 教育・文化啓発
  • (学習会・子ども会・郷土芸能の伝承など)

  • ● 高齢者支援
  • (家事援助・移送など)

  • ● 子育て支援
  • (保育の手伝いなど)

地域防犯パトロールのイメージイラスト

高齢者の社会的孤立について

孤立高齢者のイメージイラスト

健康状態などに問題がなく、生きがいを感じて日常生活を送っている多くの高齢者がいる一方で、認知症などにより、介護保険や生活保護などの行政サービスを理解できない方や行政サービスを拒否する方、健康に問題がある、生活が困窮しているなどの状況にもかかわらず、介護保険や生活保護などの必要な行政サービスを受けず、また、家族や地域社会との接触もほとんどないなど、社会から「孤立」する高齢者が存在しています。地域とのつながりがうすれている。都市化の進展と核家族などの影響が考えられます。

内閣府の調査では、令和2年(2020年)現在、65歳以上の人口3,619万人のうち、単身で暮らしている方は約703万人と、全体の約19%を占めているという結果もあり、今後も一人暮らしの数は増加するとの予測が出ています。一人暮らしで、なおかつ近所付き合いや他人との関わり、地域活動と縁の薄い状況が続くと、社会的孤立に陥りやすくなります。

高齢者の社会的孤立は、身体的、精神的健康に深刻な影響を及ぼす可能性があり、生きがいを感じられなくなったり、うつや認知症のリスクが高まり、最悪の場合、「孤独死」などの問題につながると言われています。そうならないためにも、地域社会とのつながりや社会活動への参加を通じて、コミュニケーション機会を創出して孤独感を減らし、健康な生活を支援する取り組みが必要になってきます。

私たち介護支援専門員(ケアマネジャー)は、高齢者一人ひとりが住み慣れた地域で孤立しないよう、介護保険サービスをはじめ、地域におけるさまざまなサービスや資源(フォーマル・インフォーマルサポートなど)を活用し、社会とのつながりを持ちながら、継続的に支援していくことが求めらています。

監修:看護師・主任介護支援専門員 雨師 みよ子

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