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介護のいろは お困りごと編 物忘れが多い方に
物忘れは日常生活を困難にし、周囲の人を疲れさせるもの。今回は、介護の現場でよくある「同じ話を繰り返す」「日時がわからない」「トイレの場所がわからない」という症状への対策をご紹介します。
同じ話の繰り返しは、年齢を重ねると誰しも経験があること。しかし認知症の方の場合、直近の記憶から失われてしまうため、数分前に話したことすら忘れてしまいます。逆に子どもの頃や若い頃の記憶は最後まで残るため、昔の武勇伝や楽しい思い出を繰り返すように。1日に何回何十回と繰り返されると、周囲は想像以上のストレスを感じてしまいます。
同じ話がはじまったら、初めて聞くように対応するのが理想です。無理なら適当にあいづちを打ち、聞き流すようにしましょう。どうしても手が離せないときは理由を説明し、「あとで聞きますね」と席を外してもかまいません。「またその話?」「前に聞きました」と指摘するのは逆効果。指摘された内容は忘れても、負の感情だけはご本人の中に残りがちだからです。
ご本人の話し相手を増やすと、同じ話を聞く回数が分散され、ご家族の負担も軽くなります。デイサービスを利用する、複数のヘルパーに訪問してもらう、親類や知人に話し相手になってもらう、傾聴ボランティアを依頼するなどの方法があります。
「今何時?」といつも時間を気にされる方には、ご高齢者にも見やすい時計を用意します。シンプルなデザインで文字が大きく、色づかいにメリハリがあって見やすいものを選びましょう。時計の針を読み間違いやすい方には、デジタル時計がおすすめ。暗い部屋でも光って見えますし、音声で時刻を知らせる機能が付いたものもあります。
カレンダーもシンプルで文字が大きなタイプを選び、通院日やデイサービスの日を書き入れます。毎週のルーティンが決まっていれば、週間スケジュールを紙に書いて壁に貼ってもいいでしょう。市販の服薬カレンダーも薬の飲み忘れ防止に便利です。大切な用事は、ホワイトボードに大きく書いておくと安心感が増します。
大変残念なことですが、認知症が進むと時計やカレンダーも徐々に読めなくなっていきます。そんな場合、ご本人に読む練習を強いたり、プライドを傷つける言葉を口にするのはNG。認知症は「それまでできていたことができなくなる病気」。日にちや時間を繰り返し尋ねられても、その都度返事をし、ご本人が心穏やかに過ごすことを第一に考えます。
認知症では「時間」の次に「場所」がわからなくなるケースが多く見られます。症状が進むと住み慣れたわが家でも、どこになにがあるのか、わからなくなることが少なくありません。とくに深刻な問題となるのがトイレ。トイレ以外の場所での失禁が増えてしまうと、ご本人やご家族に大きな負担となってしまいます。
トイレの場所をわかりやすくするためには、ドアに「便所」「トイレ」「お手洗い」などと記した紙を貼ります。トイレまでの経路にも、ポイントごとに「トイレはこちら⇒」と貼り紙をします。貼り紙はご本人が見やすい位置・認識しやすい文言にすること。つねにトイレのドアを開放し、照明をつけておくのもいいでしょう。
認知症が進むと、廊下の隅や洗面所、鉢植え、ゴミ箱など、トイレ以外の場所をトイレと思い込んで排泄するケースがあります。そんな場合は介護者が早めにトイレへ誘導し、できる限り失敗を未然に防ぐこと。間違えて排泄しやすい場所には防水シートを貼り、ポータブルトイレを置いておくのも一手です。