楽にできる着替え介助のコツ
他人の服を着せたり脱がしたりすることを更衣介助といいます。しかし介護に慣れていない方のほとんどは、「更衣介助の経験がない」か「うまくできなくて困っている」のではないでしょうか。病気や障がいをお持ちの要介護者の方の着替えは簡単ではありません。今回は、介護が初めての方あるいは介護経験の浅い方に向けて、寝たきりの方の着替え方法をわかりやすく解説していきます。
目次
準備しておくもの
- ●前あきのシャツ
- ●右の図のように山折り、谷折りを繰り返す蛇腹折りにしたズボン
- ●軟膏とぬり薬(病院から処方された薬があれば用意しておきましょう)
- ●バスタオル(着替えが恥ずかしいという方に使いましょう)
寝たままでズボンを着替える方法
- 1.まずズボンを脱がせます。両方のひざを立てて横向きになってもらいましょう。
- 2.ズボンを膝までおろしたら、まず介助者側のズボンを膝までおろします。次に顔と上半身のみ反対側を向いてもらい腰を浮かせ、反対側のズボンをおろします。
- 3.着替えるズボンを履かせます。蛇腹折りにしておいた着替え用のズボンを足に通します。
片足ずつ、かかとを支えながら膝までズボンを上げていきます。
- 4.片手でズボンの裾をくるぶしの位置で押さえ、もう片方の手でズボンを腰まで上げます。
とりあえずは深く履けていなくても大丈夫です。反対側も同様に行いましょう。
- 5.両足にズボンが入ったら、介助される人に腰を上げてもらいます。
「両足でベッドを押して、腰を浮かしてください」と声をかけましょう。腰が浮いている間に、ズボンをお尻まで上げていきます。
★着替え介助の注意点
1.部屋の温度は寒くないように
服を脱ぐと薄着になるため、部屋の温度は高めにしておきましょう。暖房やヒーターを使うと温度調節がしやすいです。
2.あせらなくも大丈夫
「寒くないように早くやらなきゃ」とあせってしまいがちですが、急げば急ぐほど介助はうまくいかないものです。【素早く】より【丁寧な動作】を心がけましょう。介助される方も、丁寧にやってくれているとわかると、安心して任せられるものです。
3.トイレを済ませておく
着替えの前に最後にトイレに行った時間を確認しておきましょう。着替えの時は、体感温度が変わるため、尿や便が出やすくなります。最後のトイレから時間が空いていたら、「トイレしたいですか」と一声かけてあげると、介助される側も安心です。また着替え途中に失禁して後始末が大変といった事態を避けられます。
寝たままシャツを着替える方法
- 1.ボタンをはずして、横を向いてもらいましょう。
- 2.横になったら、袖口を押さえながら片腕をぬきます。片方ができたら、反対側を向いてもらいます。残りの腕を同様にぬきましょう。
- 3.続いて服を着せていきます。袖は扇子折りにします。相手の手を握って握手の形をつくり、握手していない手でそでを通していきます。片腕だけ行います。
- 4.片腕が通ったら、横を向いてもらいましょう。横を向いたら、シャツの中心線と背骨を合わせます。この時シャツの身ごろを体の下に入れておきます。
- 5.先ほどの反対側へ横になってもらいます。体の下に入れた身ごろ(胴の部分)を引き出しましょう。そして残った手を通していきます。
袖は扇子折りにして、相手の手を握って握手の形をつくり、握手していない手でそでを通していきましょう。
- 6.両腕が通ったら、仰向けになってもらいボタンを留めていきます。
両脇の下を斜めに引っ張ると、背中に寄ったしわが伸びて褥瘡予防にもつながります。
★着替えの時は皮膚を観察しよう
着替えの時は、腕や体にアザや変色がないか確認しましょう。最も気をつけたいのは褥瘡(じょくそう)です。褥瘡は悪化すると皮膚が壊死し命にもかかわる危険な病気。現在は早期発見で治る方が多いため、着替えの時はアザや変色に注意です。褥瘡ができやすい部位はイラストを参考にしてください。
もしも気になるアザや変色があれば、かかりつけの医師に相談してみましょう。
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監修:関西医療学園専門学校 理学療法学科
教員 理学療法士 熊崎 大輔