自分で歯磨きが難しい人の口腔ケアの手順
口腔ケアの準備
■マスクや手袋をつける
介助される人の口の中の細菌から感染する可能性があります。感染予防のために手袋とマスクを必ずつけましょう。
■スポンジブラシを用意
歯ブラシで舌や頬の裏などを強く磨くと、口の中の粘膜を傷つけてしまいます。スポンジブラシなどを使って優しくケアしましょう。スポンジブラシは歯ブラシに似た形状なので、歯磨きにも使っている方もいますが目的がちがいます。歯ぐきや頬の裏、舌などの粘膜の汚れを落とすために使います。
■あごが上がらないように
イスや車イス、ベッドに座って口腔ケアをする場合は、背もたれに枕やタオルをはさんで、姿勢を正しく保ちましょう。また、あごが上がった状態のまま口腔ケアをすると、水や唾液が肺に入り誤嚥性肺炎を起こす可能性があります。あごをしっかり引いてもらいましょう。
■両足を床につける
イスや車イスに座っている場合は、姿勢が安定するように両足が床についているかを確認しましょう。
歯の磨き方
- 1.入れ歯がある人は外して残った歯を磨きます。
- 2.鉛筆と同じように歯ブラシを持ちます。
- 3.毛先を90度~45度の角度で歯と歯ぐきの境目にあてます。
- 4.力を入れずに、細かく動かしながら1本1本ていねいに磨きます。
- 5.奥歯の溝や歯と歯の間は念入りにブラッシングしましょう。
うがいの方法
ブクブクうがいができる人は、できるだけしてもらいましょう。
- 1.水を口にふくみ、まずは右の頬を膨らませて口をブクブク動かした後、同じように左側の頬を膨らませてブクブクします。
- 2.上唇と上の歯の間も同様に行います。
- 3.最後に口の中全体を膨らませてブクブクと動かします。
- ※水の代わりにデンタルリンスやマウスウォッシュを使用してもいいでしょう。
★口腔ケアをしながら、口腔内をチェック
口腔ケアをしながら口の中を確認しましょう。異常があれば歯科医に相談しましょう。
粘膜の清掃
上あご・下あご・歯ぐき・唇の内側・頬の裏側・舌は、歯ブラシで強く磨くと粘膜を傷つけてしまいます。口腔ケア専用のスポンジブラシや綿棒、ウエットティシュなどを使いましょう。
《舌の清掃》
舌の上に舌苔(ぜったい)が付いている場合もあります。舌苔とは舌に付着している白いコケのようなものです。
- 1.口腔ケア専用のスポンジブラシや柔らかい歯ブラシを用意します。
- 2.舌を出してもらい、舌苔が付いている場所に奥から手前に軽く拭き取ります。
★寝たきりの人の口腔ケア
身体を起こすことができない人や、水を口にふくめない人はウエットティッシュやガーゼを使います。
- 1.指やブラシやスポンジなどにウエットティッシュやガーゼを巻きます。
- 2.まずは上の歯と頬の間を奥から手前に向かって拭き取ります。奥まで入れ過ぎると「おえっ」となる嘔吐反射を起こしたり、痛みを感じたりする場合があるので注意しましょう。
- 3.上あごも同じように奥から手前に拭き取ります。
- 4.下の歯と頬の間も同じように拭き取ります。
- ※片マヒがある人は、マヒ側に食べカスが残っていることがあります。割りばしにガーゼを巻いて拭き取りましょう。
入れ歯の磨き方
《入れ歯の外し方》
- 1.まずは下の入れ歯から外します。前歯を持って上にあげて外します。(部分入れ歯の場合はクラスプ(金属のワイヤー)を上に軽く持ち上げて外します。
- 2.上の入れ歯を外すときも、前歯を持って奥歯を浮かせるようにしながら下におろします。
《入れ歯の洗浄方法》
研磨剤の入った歯磨き粉で磨くと、傷がつき、そこから細菌が繁殖します。入れ歯専用ブラシと専用歯磨き粉を使いましょう。
- 1.流水で入れ歯に付いた汚れやぬめりを落とします。
- 2.入れ歯ブラシで細かい部分まで磨きます。
- 3.専用容器かコップに、水と入れ歯洗浄剤を入れます。
- 4.容器の中に入れ歯を入れます。
- 5.入れ歯を取り出し、入れ歯ブラシで洗浄剤とぬめりが取れるまで磨きます。
- 6.磨いた入れ歯は消毒剤の入った専用容器で保管しましょう。
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監修:関西医療学園専門学校 歯科衛生学科(2022年4月開校)教員
歯科衛生士 熊﨑 奈津美