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ケアマネジャーさんの知恵袋~日々のケアを彩るヒント集~
【Vol.10】高齢者を支える地域での見守り

監修:看護師・主任介護支援専門員
雨師 みよ子

ケアマネジャーさんの知恵袋 ~日々のケアを彩るヒント集~【Vol.10】高齢者を支える地域での見守り

離れて暮らす高齢の親がいる場合、体調や食事面はもちろん、「詐欺や強盗にあわないか」など、防犯の観点からも、多くの心配ごとがあるのではないでしょうか。近年、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活を続けるために、さまざまな「見守りサービス」が、自治体や民間事業者で提供されています。民間事業者が提供する見守りサービスは、種類が豊富にありますので、利用目的にあわせて比較検討するとよいでしょう。例えば、直接高齢者の自宅を訪問してくれるものやセンサー式で動作を見守るもの、ボタン一つで健康相談ができたり、警備員がきてくれたりするものなど、サービスの内容も多岐に渡ります。これらのサービスを上手に利用することで、親にとっても家族にとっても安心な毎日を担保することができます。今回は「見守りサービス」における、サービス内容やその活用方法などについて紹介いたします。

(1)訪問型見守りサービス

訪問型の見守りサービスは、直接高齢者の自宅を訪問することで、安否確認や日常生活のサポートを行います。このサービスは、地域住民や専門スタッフが直接関わるため、高齢者に安心感を与えるだけでなく、他者とのコミュニケーションによって孤独感の解消にもつながります。さらに、健康状態や生活環境の変化をいち早く察知することができるというメリットもあります。
主なものとしては、民生委員や社会福祉協議会の職員、地区のボランティアによる訪問や、郵便局や新聞配達店などの事業者による訪問などがあります。また、宅配型として、お弁当や買い物の商品を自宅に直接届けることで、生活状況や安否確認を行うものもあります。

■主なサービス内容

① 地域住民による訪問

地域住民による訪問

民生委員や社会福祉協議会の職員、ボランティアなど、地域住民が主体となる訪問型サービスは、高齢者と地域社会をつなぐ大切な役割を果たします。具体的には以下のような活動が行われています。

●話し相手

ボランティアや近隣住民が定期的に訪問し、世間話や日常の出来事についての話し相手となり、高齢者の孤独感を軽減します。

●簡単なお手伝い

ごみ出しや電球の交換、郵便物の確認、買い物の付き添い・代行など、高齢者が自力で行うのが難しい作業をサポートします。

●安否確認

定期的に訪問して、体調についての質問や、対面での健康状態を確認します。何か異変が見られる場合は、必要に応じて家族や医療機関に連絡します。

② 民間事業者による訪問

民間事業者による訪問

民間事業者による見守りサービスは、郵便局員や新聞の配達員、水道局・ガスの検針員のほか、配食サービスや荷物配達業者など、数多くのサービスがあります。例えば、郵便局の「みまもり訪問サービス」の場合、局員が高齢者のもとを月1回訪問し、家族へ写真付きの報告書を送付します。月額プラン内に入院保障や電話相談も含まれています。

●定期訪問

月に1回程度、スタッフが自宅を直接訪問し、会話をしながら体調や生活の変化などを伺い、訪問結果を家族にメールや専用アプリなどで送付します。

●安否確認

長期間新聞受けに新聞が溜まっている場合などに、地区の民生委員と情報を共有して安否確認を行います。

(2)デジタル技術を活用した見守りサービス

デジタルツールやセンサーなどを活用した見守りサービスは、高齢者が自宅で安全に生活できているかを確認するための重要な手段となります。高齢者の日々の活動を追跡し、得られた情報を家族や地域社会、自治体のスタッフと共有します。高齢者自身が特別な操作をしなくても利用できるというメリットもあります。以下に具体的なサービス内容を詳しく紹介します。

① センサーを活用した見守り

センサーを活用した見守り

自宅内での動作を感知するセンサーを設置し、高齢者の生活パターンから異常を把握します。通常の行動範囲や時間帯を基準に、異常があった場合、スマホなどに通知が届く仕組みとなっています。

【主な機能と仕組み】

●動作センサー

リビングや寝室などに人感センサーを設置し、動作が一定時間確認されない場合に、家族やサービス事業者へ自動的に連絡が入ります。

●ドアセンサー

玄関ドアの開閉を検知し、外出や長時間帰宅していない場合に警告を発信します。

●電気やガス利用状況の監視

長時間使用がない場合や普段の生活パターンと異なる異常を検知した場合に通知します。

⇒導入メリット

高齢者が普段の生活を送る中での健康状態や異常を早期に察知でき、遠方に住む家族も状況をリアルタイムで把握することができます。

② 電話や自動音声による確認

定期的に電話を通して高齢者の状況を確認するサービスで、対話型の安否確認が可能です。訪問よりも頻度が高く、心身の状態をチェックし、孤独感の軽減にもつながります。訪問や見守られていることがイヤだと感じる高齢者にとっては、抵抗感も少なく利用することができます。

【主な機能】

●自動音声コール

自動音声コール

定期的に自動音声の電話がかかり、簡単な質問に答えることで安否確認が行われます。
例)「元気ですか?」「何か困っていることはありますか?」など

●オペレーター通話

専門のスタッフが直接電話をかけ、体調や困りごとについて伺い、必要に応じて対応策を提案してくれます。

●音声によるリマインド機能

薬の服用や食事の時間などを知らせてくれる機能を搭載しているサービスもあります。

⇒導入メリット

高齢者が直接話すことで安心感を与えるとともに、状況の確認ができ、緊急時には即座に適切な対応が可能となります。

③ オンラインカメラ

高齢者の自宅にカメラを設置し、モニターで映像を確認できるようにすると離れた家族がスマホやタブレットなどから、24時間・365日遠隔で様子を確認できるサービスです。常に見られていると感じないように設置場所や、使用方法はプライバシーに配慮しながら設定する必要があります。

【主な機能】

●映像のリアルタイム配信

映像のリアルタイム配信

離れた家族がスマホやパソコンを通じて、日々の生活状況や様子を確認できます。

●緊急時の録画機能

異常を検知した場合に自動的に録画され、状況を記録します。

●双方向音声通信

カメラを通じて高齢者と話ができる機能があるものもあり、直接声をかけることで安心感を与えるとともに、万一の時にも早急な対応が可能となります。

⇒導入メリット

高齢者の日常生活を視覚的に確認できるため、家族にとっても安心感があり、異常を早期に発見することができます。また、双方向のコミュニケーションが可能なタイプは、高齢者にとっても孤独感を軽減することができます。

サービスの利用方法と相談窓口

サービスの利用方法と相談窓口

上記のサービスを利用するためには、地域包括支援センターや市区町村の福祉課に相談することが第一歩となります。また、以下の事業者や団体に直接問い合わせることで具体的なサービス内容や費用についての情報を得ることができます。

  • ●電力会社や通信会社が提供する見守りサービス
  • ●地域の福祉団体が運営する安否確認プログラム
  • ●民間の介護サービス事業所が提供するデジタル見守りサービス など

*サービス使用についての説明等をしっかり理解し、確認しておきましょう。

センサーやカメラなど、デジタル技術を活用した見守りサービスは、特に独居の高齢者や家族が遠方に居住している場合に大きな安心を提供し、高齢者の安心・安全な生活を支える重要なツールとなっています。

(3)人とデジタル技術を組み合わせた見守りサービス

人の温かみとデジタル技術の効率性を組み合わせた見守りサービスは、高齢者が安心して暮らせる環境を総合的に支える新しいアプローチとして注目されています。直接的な人的交流とデジタル技術を活用することで、高齢者の安全と社会的なつながりの維持を両立させてくれます。

■具体例

① 訪問とセンサーの併用

センサー技術を活用しながら、何か異変があれば、専門スタッフや地域住民が訪問する仕組みです。

●センサーの役割

センサーの役割

自宅に設置されたセンサーが高齢者の生活リズムをモニタリングします。例えば、一定時間動作が感知されない場合や、普段と異なる不規則な生活パターンが検出された際には、アラートが発信されます。

●訪問との連携

定期的に自宅訪問を行い、直接顔を合わせて安否を確認するとともに、センサーで異常が検知された場合には、すぐに訪問スタッフが駆けつけ、状況を確認します。

●実例

一人暮らしの高齢者の寝室にモーションセンサーを設置し、夜間に動作を感知できない場合は、専門スタッフが訪問し、確認する仕組みを導入。夜間の急変時にも迅速に対応が可能です。

② 訪問とボタン式通信機器の併用

訪問とボタン式通信機器の併用

自宅に設置したボタン式通信機器から、体調異変時になどの緊急通報から専門スタッフが自宅に訪問する仕組みです。

●緊急通報ボタン

急変時や異常発生時にボタンを押すと、警備員がすぐに自宅に駆けつけ、どんな状況にも迅速に対応してくれます。

●相談ボタン

体調に関しての困りごとなどがあれば、相談ボタンから看護資格を持つ専門スタッフに24時間相談ができます。

●実例

体調不安時の相談や万一の事態に備え、一人暮らしになった高齢者宅にコンセントタイプのボタン式通信機器を設置。ボタン一つで連絡がとれるため、複雑な操作も必要なく、日々の安心感につながります。

③ 地域協力者との連携

地域協力者との連携

地域住民や協力者が、デジタル技術と連携して高齢者を見守る体制を整えます。

●緊急対応の仕組み

センサーやカメラの通知が地域の協力者に送信される仕組みを導入。例えば、家のドアが開いたままの場合や動作が検知されない場合、近隣の協力者が様子を確認しに訪問します。

●地域住民の役割

日頃から顔なじみの地域住民が参加することで、高齢者も安心してサービスを受けられます。近隣での交流を通じて、緊急時の連携がスムーズに行える点が特徴です。

●実例

地域の「見守りサポーター」が、センサーの通知を受けて高齢者の自宅を訪問したり、必要に応じて医療機関や家族に連絡をとる活動を実施。

④ 高齢者サロンや集会での交流促進

高齢者サロンや集会での交流促進

見守りだけでなく、高齢者同士の交流を促進する活動を組み合わせた取り組みです。

地域のコミュニティセンターなどで、趣味の集まりや健康増進活動を行っており、参加することで高齢者が孤立せず、友人や知り合いと定期的に交流できる場を提供しています。プログラムも手芸や音楽、体操教室など、高齢者が興味を持ちやすい内容を取り入れることで参加率を向上させる工夫がなされています。集会の際には、安否確認や健康チェックも同時に行う取り組みもあります。

●実例

毎月一度の健康体操教室では、血圧測定や健康相談も併催し、高齢者が気軽に体調を管理できる場を提供するとともに、交流の場としても活用しています。

サービス利用に際しての相談窓口

上記の見守りサービスを利用するための窓口や方法は以下の通りです。

●自治体の見守りネットワーク

自治体の見守りネットワーク

多くの自治体が地域の見守りネットワークを運営しています。地域包括支援センターや市区町村の福祉課に相談することで、該当するサービスを紹介してもらえます。

●地域のNPOやボランティア団体

NPO団体が主催する高齢者支援プログラムを活用するのも有効です。地域の協力者とデジタル技術を組み合わせた取り組みが増えています。

●民間事業者のサービス

センサーやカメラを利用した見守りシステムを提供している民間事業者も数多くあります。費用やサービス内容を確認し、自宅の環境や必要な支援に適切なものを選ぶようにしましょう。

人とデジタル技術を組み合わせた見守りサービスは、単に「見守るだけ」ではなく、「人とのつながり」があることで、高齢者の生活をより安全かつ充実したものにする可能性を秘めています。地域の支援と最新技術を活用し、高齢者が安心して暮らせる環境を整えましょう。

また、それぞれの特徴を確認していきましょう。主な見守りサービスの種類と特徴をまとめたのが以下の表です。

民間事業者のサービス

●高齢者の見守りサービスを選ぶときのポイント

  • ・本人の気持ちを尊重する
  • ・サービスの利用目的を明確にする
  • ・手軽に利用できるかを確かめる
  • ・サービス内容と料金等を比較する

心のつながりを生む見守り

心のつながりを生む見守り

単身の世帯が増え、地域のつながりが希薄化する中で、寂しさや不安を抱えて暮らす高齢者は多くいます。見守りサービスは「安全確認」のためだけに存在するものではありません。人と人との関わりを通じて生まれる「心のつながり」が、高齢者の生活を豊かにし、安心感をもたらします。サービスを支える人々の温かな行動が、高齢者の日常に笑顔や充実感を与えているのです。

心のつながりが生む効果

●訪問スタッフと直接顔を合わすので、何気ない会話が日々の楽しみとなり、孤独感が和らぐ

●高齢者が地域の一員として見守られている安心感を感じる

●地域住民同士の交流が深まり、支え合う文化が育まれる

例えば、定期的な訪問の際、スタッフやボランティアが「最近体調はどうですか?」と尋ねたり、「先日植えた花がきれいに咲いていますね。」と話題を提供するだけで、会話が生まれ日常が彩られます。こうした小さな交流が、高齢者にとっては大きな喜びとなり、精神的な安定につながっているのです。

また、地域住民が高齢者の生活を気にかける行動は、地域全体の絆を強めるきっかけにもなります。例えば、ゴミ出しのタイミングで近所の方が声を掛けたり、スーパーで顔を合わせた際に「お元気ですか?」と挨拶を交わすことで、心が通う瞬間が生まれます。

ぬくもりのある見守り活動の特徴

ぬくもりのある見守り活動の特徴

●定期訪問や挨拶など、日常の中で自然に行える

●高齢者が孤立しないよう配慮しながら、負担にならない範囲で支える

●地域住民が無理なく参加できる柔軟な仕組みを構築する

こうした「ぬくもり」のある見守りは、デジタル技術だけでは実現できない貴重な価値を持っています。見守りサービスを通じて生まれる心のつながりは、高齢者が地域で安心して暮らし続けるための大きな支えとなるでしょう。

地域やデジタル技術の力を借りた見守りサービスは、高齢者の生活を支えるために欠かせない要素です。サービスの導入を検討する際には、地域包括支援センターや各市町村の福祉課、民間事業者に相談し、ご利用者さまの状況や使いやすさ、費用面などを考慮し、適切な選択肢を見つけることが大切です。人と技術の力を活用し、誰もが安心して暮らしていける地域社会を目指していきましょう。

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