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ケアマネジャーさんの知恵袋~日々のケアを彩るヒント集~
【Vol.7】地域の力で支える身体的ケア

監修:看護師・主任介護支援専門員 
雨師 みよ子

ケアマネジャーさんの知恵袋 ~日々のケアを彩るヒント集~【Vol.7】地域の力で支える身体的ケア

高齢者や障がいのある方々が安心して生活するためには、介護保険制度などの公的サービス(フォーマルサービス)のみならず、地域で支え合うインフォーマルサポート「精神的・身体的ケア」も欠かせません。地域には、さまざまなインフォーマルサービス(民間サービス)が存在し、地域住民やNPO(非営利団体)、ボランティア団体、さらには民間企業が協力して高齢者や障がいのある方々の身体的ケアを支えています。今回は、「精神的・身体的ケア」に焦点を当て、具体的なインフォーマルサービスの活用方法をご紹介します。

(1)地域住民が提供する身体的ケア活動

地域の力を活用した身体的ケアは、自治会や町内会をはじめ、ボランティアといった地域住民が主導となり行われるケースが多く、地域の住民が自発的に協力することで、地域の高齢者や障がいのある方が安心して日々の生活を送ることができるようにサポートしています。

【具体的な活動例】

●ふれあいサロン

ふれあいサロン

介護予防や孤立防止、生きがいと健康づくりなどを目的とした、地域の居場所づくりのひとつで、定期的に高齢者や障がいのある方などと、地域のボランティアが公民館や集会所に集まり、簡単な健康チェックや体操のサポート、レクリエーションを行います。ご利用者さまの身体機能の維持や改善はもちろん、地域住民との交流を通して、ご利用者さまの閉じこもり防止や孤独感を和らげる効果も期待されます。

●生活支援

外出・移動支援

地域住民が主体となった互助活動や社会福祉法人の地域貢献活動等として、買い物や散歩、病院への送迎など、外出が困難な高齢者や障がいのある方を支援する活動を行っています。ご利用者さまの日常の暮らしを支えるとともに、地域でのつながりを維持し、身体だけでなく心身の健康を保つことができます。
市町村により対象者や報酬額、取り扱い等が異なります。

●生活支援

生活支援

地域住民やボランティアが、日常の「ちょっとした困りごと」の解決を行います。掃除やゴミ出しのほか、簡単な家事を手伝うことで、高齢者や障がいのある方の日常生活の困りごとを軽減し、ご利用者さまが自立した生活を維持できるようサポートします。

[相談先]

地域住民が提供する身体的ケア活動についての相談は、地域の社会福祉協議会や地域包括支援センターで行えます。これらの機関は、地域のボランティア活動の調整や紹介を行っており、ご利用者さまのニーズに合わせたサービスを提供するためのサポートを行ってくれます。

地域住民が提供する身体的ケア活動は、インフォーマルサービスとして積極的に活用しましょう。ふれあいサロンや外出支援、日常生活の支援を通じて、ご利用者さまが地域とのつながりを感じながら、より自立した生活を送ることができます。地域の力を借りることで、ご利用者さまの身体的ケアはもちろん、安心して暮らせる環境を作り出すことにもつながります。

(2)NPOやボランティア団体による専門的な身体的ケア支援

NPO(非営利団体)やボランティア団体は、組織的な資源を活用して地域の身体的ケア活動をより専門的にサポートする役割を担っており、特にNPOは、高齢者のニーズに応じた多様なサービスを提供しています。

【具体的な活動例】

●運動プログラムの提供

運動プログラムの提供

NPOやボランティア団体が主催となって専門的な知識を持った理学療法士等と協力し、地域の高齢者や障がいのある方に向け、定期的に運動教室等を開催しています。筋力トレーニングやバランス訓練を通じて、転倒予防や身体機能の低下予防と維持を図ります。また、運動教室を通じた、住民同士の交流やコミュニケーションの場としての側面も期待されます。

●リハビリテーションサポート

リハビリテーションサポート

ボランティア団体等が提供するリハビリプログラムでは、病気やケガからの生活機能の低下の回復を支援し、ご利用者さまが日常生活に復帰できるようサポートします。週に数回のリハビリプログラム等に参加することで、ご利用者さまは身体機能の回復・維持を図るとともに、閉じこもりを予防し,運動に力点を置いた日常的な出会いの場を作ることができます。

●健康相談会の開催

健康相談会の開催

医師会等の協力のもと、定期的に健康相談会を開き、骨密度の測定や血圧測定・血管年齢測定などのほか、地域の医師や看護師が健康に関するアドバイスを提供します。ご利用者さまがご自身の健康状態を理解し、必要なケアを適切に受けるための情報を得ることができます。

●口腔ケア教室の開催

口腔ケア教室の開催

歯科医師や歯科衛生士の協力のもと、自宅や施設などへの出張無料検診を行っています。検診したお口の状態を把握してもらうための資料の配布や、口腔ケア・ブラッシングの指導のほか、食べ物の飲み込み機能等、嚥下指導も行い、誤嚥性肺炎などの予防や健康状態の維持・向上につなげています。

[相談先]

NPOやボランティア団体による身体的ケア支援の相談は、地域のNPOセンターや市区町村の地域包括支援センター・福祉課で行えます。また直接、地元で活動しているNPO団体やボランティアセンターに問い合わせることも可能です。これらの団体は、専門的なケア支援の提供において積極的に活動しています。

NPOやボランティア団体が行う、専門的な身体的ケア支援をインフォーマルサービスとして積極的に活用しましょう。これらの団体が提供する運動プログラムやリハビリテーションサポートを利用することで、ご利用者さまの身体機能の維持・向上に役立て在宅生活の向上を図ることができます。ケアマネジャーは、地域で提供される豊富なケアリソースの情報収集を行い活用し、ご利用者さまの個別的ニーズに合ったサービスを提案しましょう。

(3)民間企業と介護サービス事業所による身体的ケアの新しいアプローチ

近年、介護認定前だが訪問介護サービスが必要、夜間・休日対応してもらいたい、老々世帯や仕事で忙しいなど同居家族も含めたサービスの希望、通院付き添いが必要で長時間対応をしてもらいたいなど、介護保険の制度内で対応できないご利用者さまのニーズは多様化しており、民間企業や介護サービス事業所も、インフォーマルサービスとしての身体的ケアの提供に力を入れています。費用負担はありますが、高齢者や障がいのある方の選択肢が広がり、より多様なニーズに応えることが可能になっています。

【具体的な活動例】

●一時帰宅時の介助サポート

一時帰宅時の介助サポート

介護サービス事業所が、入院中や介護施設からの一時帰宅時に高齢者や障がいのある方をサポートするサービスを提供しており、ご利用者さまは不安なく安心して一時帰宅が可能になります。

●自己負担によるケアサービス

自己負担によるケアサービス

介護保険の範囲内ではケアが不足している場合、有料による民間企業が提供する食事や入浴、排泄などの介護サービスの追加は、より柔軟で個別の対応が可能です。ご利用者さまは、自分のライフスタイルやニーズに応じてケアを追加選択することができ、快適な日々のサポートを受けることができます。

[相談先]

民間企業と介護サービス事業所が提供する身体的ケアについては、地域の介護事業所や専門職等と連携するのが最適です。また、サービス提供事業者のホームページで利用可能なサービスについての詳細な情報を得ることができるほか、福祉用具の販売店等でも紹介している事業者もあります。

介護保険制度のフォーマルサービスだけでなく、民間企業や介護サービス事業所が提供する身体的ケアサービスをインフォーマルサービスとして積極的に活用しましょう。特に、一時帰宅時の介助や自己負担のケアサービスは、ご利用者さまや同居の家族にとっても、非常に便利で有益です。これらのサービスを紹介し、ご利用者さまの多様なニーズに応じたケアを提供することで、よりパーソナライズ(ご利用者さまのニーズを把握し、適切な商品・サービスなどを提供する手法)された社会貢献に向けた介護環境を実現することが可能です。

地域での身体的ケアのこれから

地域での身体的ケアは、今後さらに進化し、多様な形で提供される可能性があります。特に、デジタル技術の進化は、地域ケアに新たな可能性をもたらしてくれることが期待されています。以下に、その具体的な例を紹介していきます。

●デジタル技術と遠隔ケアの普及

デジタル技術と遠隔ケアの普及

今後、遠隔医療やオンラインケアの普及により、高齢者や障がいのある方が自宅で安全に診療やケアを受けることが可能になることが予想されます。遠隔ケアによるモニタリングでは、ウェアラブルデバイス(※)を活用して、心拍数、歩数、体温などのバイタルサインをリアルタイムで測定し、医師等とデータを共有することで、健康状態の異常を早期に発見、病気の予防につなげていきます。また、オンラインでの在宅リハビリテーションでは、センサーやウェアラブルデバイスを活用して、理学療法士や作業療法士が遠隔で指導し、適切な運動をサポートすることで、ご利用者さまの身体機能の維持・改善の支援が可能になってきます。さらに、ケアロボットの開発やIoTデバイスを活用し、移動支援や日常生活のサポートを自動化するなど、介助者の負担軽減への期待も高まっています。

※ウェアラブルデバイスとは、手首や腕、頭などに装着するコンピューターデバイスです。

●包括的ケアモデルの構築

包括的ケアモデルの構築

地域住民やNPO、ボランティア団体、介護サービス事業所、民間企業等が協力し、包括的なケアモデルを構築することで、一人ひとりのニーズに寄り添った、より多くの支援が可能になります。多職種連携チームを形成し、医師や看護師、理学療法士、ケアマネジャーが協力して、医療と介護の両方の側面からご利用者さまに最適なケアプランの提供をめざします。社会資源や地域のケア拠点を活用し、予防ケアや健康教育を積極的に行うことで、地域全体の健康水準を向上させる取り組みや枠組みの整備が重要となってきます。ご利用者さまに地域でのイベントや健康教育活動への参加を促し、社会的なつながりを強化していきましょう。

●デジタルツールの導入支援

デジタルツールの導入支援

新しい技術やテクノロジーは、利用できなければ意味がありません。それらの技術を利用した遠隔ケアやデジタルサービスをご利用者さまが利用できるよう、デバイスの使用方法等を指導することも、恩恵を受けるための重要なポイントとなります。

ケアマネジャーは、未来の地域ケアの可能性を見据え、デジタルツールの導入や多職種連携を念頭に置いて、遠隔ケアの導入をサポートし、ご利用者さま一人ひとりに適切なケアを提供するとともに、地域のケア拠点とのネットワークの構築や連携協力を強化し、社会的なつながりを促進することも重要な役割と言えます。こうした取り組みは、ご利用者さまの生活の質を向上させ、地域全体で支え合う持続可能なケアの実現へとつなげていくことと、そのためには、地域の社会資源情報のアセスメントと活用についての理解をしましょう。

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