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監修:看護師・主任介護支援専門員
雨師 みよ子
心疾患のある方が退院後、自宅での生活に少しずつ慣れてくると、退院直後のような強い緊張感や戸惑いが和らぎ、食事や睡眠、服薬、通院といった日々の流れも、ある程度生活リズムが整ってきます。しかし、そんな場合でも心疾患の支援では、この「少し落ち着いてきた時期」こそ、大切に状況の確認が必要になります。なぜなら、見た目は安定しているように見えても、まだ再び不安定になりやすく、ちょっとした油断や無理が再入院につながることがあるからです。心疾患のⅡ期は、退院直後のような急な変化は少ない一方で、生活の積み重ねがそのまま状態の安定にも、悪化にもつながる時期だといえます。
Ⅱ期の大きな特徴は、身体の状態が「完全に元に戻っていない」のに、日常生活は少しずつ広がっていくことです。本人も家族も、「このくらいは大丈夫だろう」と、活動量が増えたり、逆に管理がゆるんだりすることがあります。たとえば、体重測定をしなくなる、薬を飲み忘れる日が出てくる、といったことは少なくありません。反対に、「また悪くなったら怖い」という思いが強すぎて、活動を控えすぎ、生活機能が落ちていくこともあります。Ⅱ期では、やりすぎも、やらなさすぎも、どちらも問題になりやすく、「今の生活の中でどのように安定を保つか」の状況把握から丁寧に支える必要があります。
またⅡ期では、身体面の管理だけでなく、本人の不安や家族の疲れ、生活上の負担にも目を向けることが大切です。心疾患は、外見だけでは状態の重さがわかりにくい病気です。そのため、「見た目は元気そうだから」と周囲が感じたり、本人自身も「周りに心配をかけたくない」と無理をしてしまったりすることがあります。心疾患を抱えながらの生活は、本人も家族にとっても、常にどこかで注意や我慢を伴うものです。だからこそⅡ期では、生活状況を管理することと、生活を支えることを切り離さずに考えることが大切になります。
Ⅱ期は、退院直後のような医療との密な関わりが少しずつ薄れ、自宅での生活が中心になってくる時期です。そのため、支援の軸も「退院できた直後をどう乗り切るか」から、「これからの生活をどう安定して続けるか」へと移っていきます。しかし、この時期に注意したいのは、本人も家族も「もう大丈夫」と感じやすくなることです。状態が急に悪化していない、生活状況が順調である、入院もしていない。そうした状況は一見すると安定に見えますが、実際には、日々の暮らしの中に再び不安定さにつながる要素が少しずつ入り込みやすい時期でもあります。
たとえば、薬を飲み忘れる、塩分や水分の管理が不十分、少し動けるようになったことで無理をする、逆に不安が強くて動かなさすぎる。こうした変化は、一つひとつは小さなことに見えますが、心疾患ではその積み重ねが大きな状態変化につながることがあります。だからこそⅡ期では、「今は落ち着いているから安心」と考えるのではなく、安定している今だからこそ生活を見直すという視点が必要になります。Ⅱ期は、急性期のような緊急性が表に出にくい分、日々の暮らしの整え方そのものが支援の中心になります。
またⅡ期では、本人の理解や自己管理の力がより問われる時期でもあります。退院直後は家族や医療職の関わりが強くても、時間が経つにつれ「自分でやること」が増えていきます。病気の理解が曖昧なままだと、管理の意味を見失いやすくなります。この時期は、「何を続ける必要があるのか」「なぜそれが大切なのか」を、改めて本人や家族が理解し直せるように支えていくことが重要です。
Ⅱ期でまず大切なのは、再入院を防ぐための生活状況管理を続けることです。
ただし、それは退院直後のような緊張感ではなく、緊張しすぎず、でも緩みすぎない形で、必要な管理を生活の中に定着させていくことが大切です。再入院につながる要因は、一つだけではありません。服薬が不十分になる、体重や血圧の変化に気づけない、食事管理が崩れる、活動量が極端に偏る、症状の変化を軽く考えてしまう。これらが重なって、少しずつ状態が悪化していくことがあります。再入院予防では、「これだけやれば安心」ではなく、毎日の暮らしをどう安定させるかが大切になります。
また、本人や家族が「管理に疲れ切ってしまわない」ことにも注意が必要です。心疾患のある方は、食事、服薬、体重、血圧、運動、休養など、多くのことに気を配る必要があります。しかし、それをすべて「頑張り」で続けようとすると、長続きしません。そのためⅡ期では、必要な管理をできるだけ暮らしの流れの中に自然に組み込むことが重要です。毎朝決まった時間に体重を測る、服薬の時間を生活習慣と結びつける、食事を家族と一緒に見直す、体調の変化を記録するなど、続けやすい形にしていくことで、管理は「負担」だけでなく「安心の材料」に変わっていきます。
さらに、再入院予防では、本人だけに責任を負わせないことも大切です。自己管理が大切とはいっても、すべてを本人一人で抱えるのは難しく、本人が主体でありながらも、家族や支援者が無理なく関われる形を整え、「一緒に見ていく」感覚を持つことが、再入院予防につながります。
Ⅱ期では、服薬と病気への理解を改めて支えることがとても重要です。退院直後は、「薬は大事」と本人も家族も意識しやすいものですが、時間が経つと緊張感が少しずつ薄れ、「今日は飲まなくても大丈夫かな」「少しくらい忘れても問題ないのでは」と感じやすくなることもあります。しかし、心疾患の薬は、症状が強いときだけではなく、状態を安定させ続けるために必要なものです。だからこそ飲み忘れを責めるのではなく、「なぜ続ける必要があるのか」を改めて理解しやすい形で説明していくことが大切です。
また、病気そのものの理解も、Ⅱ期では改めて大切になります。心疾患は、見た目の症状が落ち着くと、本人も家族も「もう治ったような気がする」と感じやすくなります。しかし実際には、症状が落ち着いていても、病気が治ったわけではありません。心疾患を抱えながら生活していくことは、体調の変化に気を配り、必要な支援を続けていくことです。その意味を本人が病気をどう理解しているどうかで、生活状況の質は変わってきます。Ⅱ期では、「退院できたから終わり」ではなく、「これからの生活の中で病気と付き合っていく」という視点を支えていくことが必要です。
Ⅱ期では、体重、塩分・水分、血圧の管理を継続することが重要です。これは、状態の安定を保つ上でも、再入院を防ぐ上でも欠かせません。ただし、Ⅱ期では、実際に続けられているかがより大切です。毎日の体重や血圧測定も、塩分や水分も少しずつ気がゆるんでしまい、「普段は大丈夫そうだから」と測らなくなると、日々の変化に気づくタイミングを逃しやすくなります。
普段から「管理しなければならない」と捉えるのではなく、暮らしの習慣として続けるにはどうするかを考えることが大切です。いつ測るのか、誰が確認するのか、記録はどう残すのか、変化があったときにはどう考えるのか。そうしたことが曖昧なままだと、どんなに大事だとわかっていても続けにくくなります。
また、数値だけを追うのではなく、「前より体重が増えている」「足がむくみやすい」「最近息切れしやすい」といった生活の中の変化と結びつけて考えることが重要です。数値はあくまで手がかりであり、実際の暮らしの中で何が起きているかを見ることが支援には欠かせません。日々の状況管理は、本人を縛るためのものではなく、安心して暮らしを続けるための支えです。その意味が本人や家族に伝わるようになると、日々の確認は「面倒なこと」から「安心のための習慣」へと変わっていきます。Ⅱ期では、その変化を支えていくことが大切です。
Ⅱ期では、活動量の調整が引き続き重要なテーマになります。退院直後より少し動けるようになると、本人は「前の生活に戻りたい」、家族も「もう大丈夫では」と感じやすくなります。しかし、心疾患では、この「少しできるようになった時期」に無理をしてしまうことが少なくありません。長時間の外出や立ち仕事、重い物を持つ作業、気温差の大きい場所での活動などは、心臓に負担をかけやすく、その負担はすぐに表れないこともあり、「その日は大丈夫だったけれど翌日しんどい」「少しずつ疲れがたまる」といった形で表れることもあります。
一方で、不安が強すぎると、「また苦しくなったら怖い」と感じ、今度は活動不足が問題になります。必要以上に安静にすると、筋力や体力が落ち、生活機能が低下しやすくなります。すると、少しの動作でも疲れやすくなり、ますます活動しないという悪循環につながります。Ⅱ期では、「無理しすぎ」だけでなく、「やらなさすぎ」にも注意が必要です。
心疾患の支援では、活動を一律に制限するのではなく、今の状態に合った活動をどう続けるかを考える必要があります。そのために重要なのは、本人と家族が 活動制限の意味を理解することです。どのような動きが負担になりやすいのか、どういう疲れ方に注意すればいいか、どの程度なら生活の中で続けやすいのか。そうしたことを具体的に共有することが、この時期の支援では重要になります。
Ⅱ期でも、在宅での観察の視点はとても重要です。
むしろ退院直後より少し時間が経ったこの時期のほうが、変化を見逃しやすい面があります。緊張感がやわらぎ、「少しぐらい大丈夫だろう」と感じやすくなるためです。だからこそ、日々の生活の中で「いつもと違う」変化を見つけられることが大切です。たとえば、足のむくみが増えてきた、体重がじわじわ増えている、歩くときに息切れしやすくなった、横になると息苦しいなど。こうした変化は、小さく感じるものであっても、状態の悪化につながる手がかりになります。
観察というと、専門的に感じるかもしれませんが、実際の生活では、「前よりしんどそう」「最近食欲がない」「いつもより顔色がよくない」といった日常的な気づきも大切です。大事なのは、変化を最小限なものとして捉えるのではなく、変化に気づいて早めに対応することです。本人が一人で抱え込まないこと、家族が迷いすぎないこと、支援につながれる先があること。そうした土台があると、Ⅱ期の生活は安定しやすくなります。
Ⅱ期では、身体の状態が少し落ち着いてくる分、不安や気持ちの落ち込みが見えにくくなることがあります。退院直後の強い緊張は和らいでも、「また悪くなるのでは」という不安が消えるわけではありません。少しの息切れや動悸で強く不安になる方もいますし、「家族に迷惑をかけている」と落ち込む方もいます。また、以前のように働けない、思うように動けないことから、自信を失っていることもあります。Ⅱ期では、こうした不安や喪失感が長引くと、活動量や生活意欲にも影響しやすくなるため、身体の管理だけでなく、本人の気持ちをどう支えるかも重要になります。
また、家族の疲れも同様です。
退院直後は「何とか支えよう」と頑張れていても、長く続くと見守りや食事管理、服薬確認、通院の付き添いなどの負担が少しずつ重なり、本人が元気そうに見えるほど、家族の負担感は周囲に伝わりにくくなります。
Ⅱ期では、本人だけでなく家族も含めて、無理がたまっていないかを見ていくことが大切です。家族もまた支援される側であるという視点を持つことが、この時期の支援では欠かせません。
Ⅱ期でも、生活環境の見直しは大切です。ただし、ここでの環境調整は、今の生活の中で無理や負担がないかを見直すという意味合いが強くなります。たとえば、移動距離が長すぎて疲れる、トイレや洗面所が寒くて身体に負担がかかるなど。そうした生活の中の負担は、本人にとっては「仕方ないこと」と感じられているかもしれませんが、その積み重ねが体調に影響することがあります。
「どうすれば生活を続けやすいか」という視点で環境を見ることが大切です。疲れをためにくい動線になっているか、日常動作の中に過剰な負担がないか。それらを確認しながら、暮らしを整えていくことが、結果として状態の安定にもつながります。あくまで主役は道具ではなく生活全体ですが、適切に福祉用具を活用することで、移動や動作の大きな負担の軽減につながることがあります。まずは動作の「何がしんどいのか」「どこを変えると暮らしやすいのか」を見ることが基本になります。
退院直後は、本人も家族もとても慎重です。しかしⅡ期に入ると、生活に少し慣れてくる分、油断が入りやすくなります。体重測定をしない日が増える、薬をうっかり忘れる、食事の管理がゆるむ、少し無理をする。
一つひとつは小さなことでも、心疾患ではその積み重ねが状態の悪化につながることがあります。だからこそⅡ期では、「落ち着いているからもう安心」ではなく、落ち着いている今の暮らしをどう続けるかを考えることが大切です。
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