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【Vol.6】 心疾患(Ⅰ期:入院・退院直後)
― “心”に寄り添うケアプラン ―
身体・心理の両面から支える退院後支援

監修:看護師・主任介護支援専門員 
雨師 みよ子

ケアマネジャーさんの知恵袋 ~適切なケアマネジメント手法~【Vol.6】 心疾患(Ⅰ期:入院・退院直後) ― “心”に寄り添うケアプラン ― 身体・心理の両面から支える退院後支援

心疾患のある方が退院後、自宅での生活を再開する時期は、身体だけでなく気持ちの面でも大きく揺れやすくなります。入院や治療を経て、「退院できた」という安心感がある一方で、「また悪くなったら」「食事は何に気をつけたらいいのだろう」といった不安を抱えやすくなります。心疾患は、日常生活の中で急な悪化や再入院につながるおそれがあるため、退院後の暮らし方そのものが治療や予防に深く関わるという特徴があります。そのためこの時期の支援では、病気を抱えながら、どう生活を立て直していくかを丁寧に考えることが大切になります。

心疾患の支援では、身体症状の観察だけでなく、本人の理解や不安、生活習慣、家族の関わり方も含めて考える必要があります。心不全や虚血性心疾患など、心疾患にはいくつかの種類がありますが、共通して重要なのは、再入院を防ぐための生活管理と、生活機能を落としすぎない支え方です。退院直後は医療とのつながりがまだ強く、本人も家族も「生活の中でどこまで動いてよいか」「どんな変化に注意すべきか」がつかみにくい状況です。そのため初期段階では、病気の理解や服薬、体重や血圧の確認、塩分・水分の調整、活動量の見極め、症状の変化への気づきなど、生活管理の基本を一つずつ支えていくことが重要です。

また、支援においては身体面と心理面を分けて考えないことも大切です。少しの息切れや動悸で、強い不安を感じたり、強い不安から活動を控えすぎて筋力や体力が落ち、生活機能が下がってしまうこともあります。さらに、入院を経験したことで自信を失い、抑うつ的になったり、将来への見通しが立てにくくなったりすることもあります。心疾患のⅠ期では、こうした不安や気持ちの揺れも自然なものとして受け止めながら、家族の心理的不安の解消とともに、安心して生活を続けるための支援を組み立てていく必要があります。

(1)心疾患のⅠ期は
「再入院を防ぎながら生活を立て直す時期」

退院直後は、状態が安定したように見えても、再び不安定になりやすい時期です。本人や家族にとっては、「退院できたからもう大丈夫」と思いたい気持ちがある一方で、実際にはまだ医療との関わりが強く必要な時期でもあります。心疾患では、ちょっとした生活の乱れや体調変化が、再入院につながることがあります。

服薬がうまく続かない、塩分や水分のとり方が適切ではない、無理をして活動量が増えすぎる、逆に活動量が減って体力が落ちる、症状の変化に気づくのが遅れる。これらが重なると、状態が再び悪化することがあります。そのためⅠ期では、まず再入院の予防を支援の柱に据えることが大切です。

再入院を防ぎながら生活を立て直す時期イメージイラスト

ただし、再入院予防とは、本人を安静にさせることではありません。
むしろ大切なのは、本人と家族が病気を理解し、退院後の生活で何を意識すればよいか理解し、無理なく管理が続けられるようにすることです。生活全体を管理の対象として捉えながらも、「これはダメ」と制限ばかりが前面に出ると、本人の不安や疲れは強くなってしまいます。

必要なのは、「病気を抱えながらも生活は続く」という前提に立って、続けられる生活管理を整えることです。再入院を防ぐことと、自立支援の生活を支えることは同じ方向にあると捉えることがあります。

(2)疾患の理解と服薬は、退院後支援の基本になる

Ⅰ期では、本人と家族が病気をどこまで理解できているかがとても重要です。心疾患は、見た目にはわかりにくい病気です。そのため、症状が落ち着いてくると、「今は大丈夫」と感じ、本人も家族も病気の重さを実感しにくくなります。しかし、心疾患では、症状が落ち着いていても生活管理を続けることが大切で、その意味を理解しているかどうかが、その後の生活に大きく影響します。

特に、服薬の継続は退院後支援の基本です。処方薬をきちんと飲むことは、状態を安定させ、再入院や急性増悪を防ぐうえで重要です。退院直後は薬の種類が多かったり、飲む時間が変わったりして、本人や家族が混乱しやすくなります。「何の薬なのか」「飲み忘れたらどうなるのか」「体調がいい日も飲む必要があるのか」といった疑問が残ったままだと、継続は難しくなります。そのため、単に「飲んでください」と伝えるのではなく、本人と家族が納得して続けられるように整理することが必要です。

服薬管理は治療の一部であると同時に、日々の生活に組み込まれるセルフケアでもあります。薬の多さを心配して内服を控えてしまっているなど、本人だけや家族が抱え込むのではなく、無理なく続けられる形を一緒に考えることが大切です。

(2)疾患の理解と服薬は、退院後支援の基本になるイメージイラスト

また、心疾患には糖尿病や腎機能低下、脂質異常症などの併存疾患があることも少なくなく、これらへの対応も含めて見ていく必要があります。心臓の病気だけを見ていては、実際の生活は支えきれません。心疾患のⅠ期では、「心臓の病気の管理」と「生活全体の管理」がつながっていることを意識しながら支援することが大切です。

(3)体重・塩分水分・血圧の管理は、
“無理なく続けられること”が大切

退院後支援では、体重・塩分や水分・血圧の管理が重要となり、急性増悪や再入院を防ぐうえで欠かせないポイントです。
体重の増減は体内の水分状態の変化を知る手がかりになり、塩分や水分のとり方は心臓への負担に大きく関わります。血圧もまた、状態の安定や再発予防を考えるうえで重要な指標です。ただし、ここで大切なのは、「管理する項目が多い」と本人や家族を追い込まないことです。支援として大切なのは、必要なことを生活の中で無理なく続けられる形にすることです。

(3)体重・塩分水分・血圧の管理は、無理なく続けられることが大切イメージイラスト

例えば、体重測定はいつ測り、何に記録するのか。
変化があった時にどう考えるのかがわからないと、習慣づけしにくくなります。これは塩分や水分の調整も同じです。厳しく制限すると食事が苦痛になり、かえって続かなくなります。そのため、この時期の支援では、「本人も続けやすい」「家族も支えやすい」という現実的な方法を一緒に考える必要があります。管理とは、本人を縛ることではなく、生活を安定させるための支えです。その意味が本人や家族に伝わると、生活管理は少しずつ暮らしの一部になっていきます。

また、排泄の状態やむくみ、体重の増減などは、日々の変化として見逃されやすい一方で、とても大切なサインです。「少し足がむくんできた」「最近体重が増えた」「息切れしやすくなった」といった変化は、心不全の悪化につながることがあります。数値だけでなく、生活の中で起きている変化に気づくことが心機能低下を招くのを防ぐために重要です。管理項目を覚えるよりも、いつもとの違いを感じ取れることのほうが、実際の生活では大きな意味を持ちます。

(4)活動を止めすぎず、
無理もしすぎない支援が必要になる

Ⅰ期では、活動量の考え方がとても難しいところです。
本人も家族も少しの息切れや疲労で、「動いて大丈夫か」「安静にしたほうがいいのでは」と不安になりやすく、活動を控えすぎることがあります。しかし、過度に安静にしすぎると、筋力や体力が低下し、かえって生活機能が落ちてしまいます。一方で、頑張って動きすぎると心臓に負担がかかることもあります。この「止めすぎても、無理をしてもよくない」というバランスの難しさが、心疾患のⅠ期支援の特徴です。

この時期に大切なのは、活動制限の意味を本人と家族が理解することです。「なぜ今はこの程度の活動がよいのか」「何に注意しながら生活すればよいのか」を具体的に整理することが必要です。本人が必要以上に不安にならず、家族も過度に止めすぎない。そのためには、活動そのものを善し悪しで考えるのではなく、今の状態に合った生活の組み立て方を一緒に考えることが大切です。環境や動作の改善に際しては、支援の必要性、本人・家族の意向を確認することも大事です。

(4)活動を止めすぎず、無理もしすぎない支援が必要になるイメージイラスト

また、日常生活の中には、本人が思っている以上に負担のかかる場面があり、長時間の活動や重い物を持つ動作、気温差の大きい場所での動きなど、心臓に負担をかけやすい条件も意識する必要があります。生活の中で「何をやめるか」だけでなく、「どうすれば負担を減らして続けられるか」という視点を持ち、日常生活において活動負担が大きい事項の把握を行い、暮らしを整えることがこの時期の支援では重要になります。

(5)在宅での観察ポイントは
「数値」だけでなく「いつもとの違い」

心疾患の退院直後では、在宅での観察の視点も重要です。ただし、医療的な数値を管理することだけでなく、実際の生活で「いつもとの違い」に気づけることがとても大切です。

例えば

  • 足のむくみが強くなってきた
  • 階段の昇り降りや歩行で息切れしやすくなった
  • 横になると息苦しさを感じる
  • 食欲が落ちてきた など

こうした変化は、本人にとっては「少ししんどい」程度に感じられても、状態の悪化のサインである場合があります。

(5)在宅での観察ポイントは「数値」だけでなく「いつもとの違い」イメージイラスト

こうした変化を本人や家族は、心疾患と結びつけられないことがあるため、「どのような変化に気をつけるか」を、生活に沿った形でわかりやすく整理しておくことが大切です。むくみや息切れ、体重の変化、夜間の状態、活動後の疲れ方。こうした視点を持っているだけでも、変化に早く気づきやすくなります。観察のポイントは、“いつもと違う”に気づき、早めに支援につなげるための手がかりです。観察は監視ではなく、安心して暮らすための支えとなります。最終的にどの程度の活動範囲にするかについて、本人や家族など、関連する専門職等とのすり合わせを行いましょう。

(6)本人の不安や抑うつにも
目を向けることが欠かせない

Ⅰ期では、心理的な支援もとても重要です。退院直後の方の中には、「また悪くなるかもしれない」といった強い不安を抱える方がいます。また、入院や治療を経験したことで、自分の身体に対する自信を失っていたり、以前のように動けないこと、家族に心配をかけていることへの落ち込みから、抑うつ的になることもあります。


心疾患では、症状の経過だけでなく、こうした心の動きも生活に大きく影響します。不安が強いと必要以上に活動を避けてしまったり、少しの息切れでも「悪化したのでは」と感じてしまい、動くこと自体が怖くなったり、逆に不安をうまく言えずに無理をしてしまう方もいます。そのため、この時期の支援では、身体だけでなく、「どんなことを不安に感じているか」「生活の中でどこに困っているか」「気持ちの落ち込みはないか」にも目を向ける必要があります。大切なのは不安を否定せず、「そう感じるのは自然なこと」と受け止めながら、生活の中で安心につながる工夫を一緒に考えていくことです。本人や家族が抱える不安の状況や程度を把握できる体制を整えることが大切です。

(6)本人の不安や抑うつにも目を向けることが欠かせないイメージイラスト

(7)家族との役割調整も、
退院後支援では大切になる

退院後支援では、家族との役割調整も欠かせません。家族は本人を支えたい一方で、「どこまで気をつければいいか」「無理をさせてはいけないのでは」「食事や服薬をどこまで確認すればいいか」と迷いやすいものです。本人に必要な塩分・水分量と日常的に摂取している水分・栄養とを評価していくことが大事です。本人が自分で管理したいと思っていても、家族が心配して口を出しすぎることもあります。大切なのは、本人と家族が対立しないように、役割を整理しながら支え合える形をつくることです。


例えば、体重測定や服薬を本人が行うのか、家族が確認するのか。食事づくりで何を意識するのか。息切れやむくみがあった時に誰がどう気づくのか。これらが曖昧なままだと、本人は「監視されている」と感じたり、家族は「何かあったら自分の責任」と感じたりして、生活の中に緊張が生まれやすくなります。退院直後の支援では、本人の生活習慣や気持ちを尊重しながら、家族が無理なく関われる形を整えることが重要です。家族もまた支援される側であるという視点を忘れずにいたいところです。

(7)家族との役割調整も、退院後支援では大切になるイメージイラスト

(8)環境を整えることは「楽をする」ためでなく
「負担を減らして生活を続ける」ため


Ⅰ期では、生活環境の見直しも大切です。急激な体位変換や長い移動、階段の昇り降り、重い物を持つ動作、寒暖差の強い場所などは身体に負担がかかりやすくなります。そのため、生活環境の中でどこに負担がかかるかを認識することが重要です。大切なのは「楽をするため」ではなく、負担を減らしながら生活を続けるために環境を整えるという考え方です。

(8)環境を整えることは「楽をする」ためでなく「負担を減らして生活を続ける」ためイメージイラスト

例えば

  • トイレや洗面、浴室までの移動が長くて負担になっていないか
  • 立ちっぱなしの家事が多くないか
  • 寝室と生活空間の動線に無理がないか
  • 季節による温度差が大きくないか

そうした生活の中の“しんどさ”を減らすことが、心臓への負担を減らし、再入院予防にもつながります。福祉用具も必要な場面では役立ちますが、主役はあくまで生活全体の組み立てです。
まずは「どの動きがしんどいのか」「どこを変えると暮らしやすくなるか」を捉えることが大切です。福祉用具は、その一部として考えるくらいが丁度よいでしょう。

心疾患の退院直後は
「元気そうに見えても無理が重なりやすい」

心疾患のある方は、退院直後でも見た目には元気そうに見えることがあり、本人や家族も「もう普通に戻してよいのでは」と思いがちですが、実際にはまだ再び不安定になりやすいリスクがあります。


少し動けるようになったことで無理をしてしまったり、息切れやむくみなどの変化を見逃してしまったり。
退院直後は、「元気そうかどうか」だけで判断せず、生活の中でどれくらい負担がかかっているか、いつもと違う変化がないかを丁寧に見ていくことが大切です。
医師からの指示内容とともに、本人・家族等の意向も確認し、生活環境を変えることを本人・家族等が受け入れられることができるよう支援します。

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