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【Vol.4】 脳血管疾患(Ⅱ期)
- 生活期は“生活を続けること”が回復と予防につながる -

監修:看護師・主任介護支援専門員 
雨師 みよ子

ケアマネジャーさんの知恵袋 ~適切なケアマネジメント手法~【Vol.4】  脳血管疾患(Ⅱ期) - 生活期は“生活を続けること”が回復と予防につながる -

脳血管疾患の支援では、退院直後をどう乗り越えるかが大きな課題になりますが、同じくらい大切なのが、その後の生活をどう継続できるかという視点です。退院直後は、無理せず転倒に気を付けながら、安全に暮らし始められるように支援を整えることが中心になります。しかし、生活が少し落ち着いてくると、支援の中心も変わってきます。守ることだけでなく、生活をどう維持するか、活動をどう保つか、意欲をどう支えるかが大切になってきます。

この時期をⅡ期(生活期)として考えます。生活期とは、退院直後の強い不安定さから、自宅での暮らしにある程度慣れてきた時期です。起きる、食べる、トイレに行く、休むといった基本的な流れが少しずつ整い、「何とか家で暮らせそうだ」という感覚が出てくる一方で、活動量の低下という別の課題が生まれやすい時期です。慎重な生活を送っていた影響が続き、家の中で座っている時間が増えたり、外出や人との関わりが減ることで、筋力や体力が落ち、生活の幅が少しずつ狭くなってしまうことのリスクがあります。

脳血管疾患は、後遺症等により身体の機能だけではなく、移動や入浴、排泄、食事、外出、役割、社会とのつながりなど、生活全体に影響を及ぼします。片麻痺や筋力低下、バランス障害、嚥下機能の低下などが続けば、日常生活には制限が生まれます。そして、その制限が活動量の低下につながりやすいのが、この疾患の難しさでもあります。一方で、脳血管疾患には回復の可能性もあります。生活の工夫や日常動作の積み重ねによって、できることが少しずつ増えていくこともあります。但し同時に、再発のリスクも忘れてはいけません。つまりⅡ期では、生活をどう続けるかと再発をどう防ぐかの両方を捉え支援していく必要があります。

(1)Ⅱ期の支援では
「生活を継続させること」が中心になる

生活期では、支援の中心は「安全に暮らし始めること」から、「生活を継続させること」 へと移っていきます。これは、起床や食事、寝る時間といった生活リズムを整え、無理のない範囲で活動を続け、本人にとって大切な生活を少しでも保っていくことを意味します。生活が落ち着いてくると、周囲も本人も「とりあえず生活は回っている」と感じやすくなりますが、そこで支援が止まってしまうと、いつの間にか動く機会や外出、人と会うことが減り、結果として生活の質が下がってしまいます。

生活期で気をつけたいのは、大きな困りごとが見えにくくなる一方で、小さな縮こまりが積み重なりやすいことです。

たとえば

  • 転倒が心配だから外出しなくなる
  • 疲れるから家事をしなくなる
  • 介助の方が早いから動く機会が減る

といったことはよくあります。

生活期では、支援の中心は「安全に暮らし始めること」から、「生活を継続させること」 へと移っていきます。

一つひとつの小さな変化が積み重なって活動量が減り、筋力や体力、意欲の低下、役割の喪失につながることで、「動かない生活」を強めてしまうため、Ⅱ期では生活の中に無理のない活動をどう組み込み、生活リズムをどう保つか、社会との接点をどう残すかが大切になります。また、福祉用具の適切な活用による視点も大切です。

また「生活を継続する」という視点は、単なる習慣の維持ではなく、その人がこれまで大切にしてきた暮らし方や役割、好きなこと、やりたいことをできる範囲で残していくことでもあります。

たとえば

  • 決まった時間に起きる
  • 新聞を読む
  • 庭に出る
  • 買い物に行く
  • 人と話す
続けたい生活をどう支えるかを考えることが重要です。

こうした日々の行いが、その人らしい暮らしをつくっています。脳血管疾患の支援では、失った機能だけを見るのではなく、続けたい生活をどう支えるかを考えることが重要です。

(2)Ⅱ期で特に注意したいのは
「活動量の低下」

生活期に入って最も注意したいことは、活動量の低下です。退院直後は本人も家族も慎重になりやすく、「無理をしないこと」が強く意識されます。それ自体は大切なことですが、その状態が長く続くと、動く機会が減ってしまいます。動かないことが続いて起こる機能低下は、生活全体に大きな影響を与えます。脳血管疾患では、もともと身体機能に制限があるため、活動量の低下はより深刻な問題になりやすいのです。

活動量が落ちると、まず筋力や体力が下がりやすくなり、ちょっとした移動や立ち上がりも負担に感じ、「しんどいからやめておこう」「危ないから座っていよう」という判断が増えます。その結果、さらに動かなくなり、生活の幅が狭くなるという悪循環が起こります。また、外出や人と会う機会も減り、刺激が少なくなって生活への意欲が低下することもあります。本人が「もう外に出なくていい」「どうせできない」と感じ始めると、生活を広げることがさらに難しくなります。Ⅱ期では、こうした変化を“仕方がないこと”と見過ごさず、生活の中の活動をどう保つかを考えていく必要があります。生活の幅を広げるため、福祉用具等を活用し活動できる環境づくりも大事になってきます。

福祉用具等を活用し活動できる環境づくりも大事

大切なのは、「たくさん運動すること」ではありません。Ⅱ期で必要なのは、生活の中で無理なく動く機会を保つことです。

  • 家の中を歩く
  • 食卓まで移動する
  • 自分でできる動作は続ける
  • 短時間でも外に出る
  • 人と会う機会をつくる
生活の中で無理なく動く機会を保つこと

そうした日常の積み重ねが活動量の維持につながり、身体機能だけでなく、意欲や生活の質を保つためにも大切です。

(3)脳血管疾患では
「生活そのものが回復につながる」

脳血管疾患のⅡ期を考えるうえで大切なのが、生活そのものが回復につながるという視点です。脳血管疾患には回復の可能性があり、その回復は特別な訓練だけで起こるのではなく、起き上がる、立つ、歩く、食事をする、着替える、トイレに行く。こうした生活動作の繰り返しそのものが、身体機能の維持や回復につながっていきます。

ここで気をつけたいのは、安全を優先するあまり、全てを介助してしまうことです。危険を避けることは大切ですが、本人ができることまで周囲が代わってしまうと、動く機会が失われてしまい、結果として機能の低下につながりやすくなります。Ⅱ期では、「できる部分は本人に任せ、難しい部分を支える」という考え方が大切です。本人が自分でできることが少しでも残っていれば、それは身体の維持だけでなく、気持ちの面でも大きな意味を持ちます。

「できる部分は本人に任せ、難しい部分を支える」という考え方が大切

また、生活の中での回復を支えるには、目標設定も重要です。

  • 「トイレまで自分で行きたい」
  • 「また外に出られるようになりたい」
  • 「近所まで歩けるようになりたい」
実際にはかなり緊張していることがあります。

といった、生活に直結した目標があると、日々の動きに意味が生まれます。目標は大きなものでなくてもかまいません。本人にとって納得できる、生活につながる目標であることが大切です。目標があることで、本人の意欲も変わってきます。また、家族や支援者にとっても、どこを支え、どこを本人に任せるかを考えやすくなります。生活期の支援では、「何をできるようにするか」だけでなく、「どんな生活を続けたいか」を中心に考えることが大切です。そうすることで、回復は訓練の延長ではなく、生活そのものの中に位置づけられるようになり、目標達成のための評価も大事になります。

(4)Ⅱ期では
生活リズムと社会参加も大切な支援になる

生活期では、生活リズムを整えることも重要な支援になります。
生活リズムが整っていると、暮らしにメリハリが生まれ、体調も安定しやすくなります。逆に、昼夜逆転や食事時間の乱れ、活動のない日が増えると、身体の状態だけでなく気持ちの面でも不安定になりやすくなります。脳血管疾患のある方は、活動が少なくなることで生活リズムが崩れやすいこともあるため、Ⅱ期では暮らしの流れを整える視点が欠かせません。

さらに、社会参加も生活期ではとても大切です。

  • 外出の機会がある
  • 人と関わる時間がある
  • 誰かと話す
  • 何かの役割を持つ
社会参加も生活期ではとても大切です。
これらは、生活の質を保つだけでなく、意欲や活動量にもつながります。家の中だけで完結する生活になると、身体を動かす機会だけでなく、気持ちが動く機会も減ってしまいます。だからこそⅡ期では、「どこまで歩けるか」だけでなく、「どこに行きたいか」「誰と関わりたいか」「どんな場面に参加したいか」という視点も持つことが大切です。
生活の質を保つだけでなく、意欲や活動量にもつながります。

福祉用具等の活用で運動を増やし、社会参加の機会を持てるようにすることも大事です。社会参加といっても大きなことではなく、近所に買い物に行く、デイサービスに通う、人と話す機会を持つなど、その方に合った形で考えることが重要です。

(5)再発予防は「特別なこと」ではなく、
日々の暮らしの中で考える

脳血管疾患では、一度発症すると再発のリスクを意識することが大切です。そのためⅡ期では、生活を続けることと同時に、再発を防ぐ視点も欠かせません。ただし、再発予防といっても、特別なことを増やす必要があるわけではなく、むしろ大切なのは、日々の生活の中で無理なく続けられる形にすることです。

たとえば、

  • 食事の内容を少し見直す
  • 塩分や栄養のバランスに気を配る
  • 無理のない範囲で身体を動かす
  • 薬をきちんと飲むなど
食事の内容を少し見直す

これら一つひとつは特別なことではありませんが、再発予防にはとても大切です。そして何より重要なのは、頑張りすぎないことです。再発を防ぐために完璧を目指すのではなく、本人の生活の延長線上で無理なく取り入れられることが長く続けやすく、結果として安定した暮らしにつながります。

再発予防というと、「注意すること」が多くなりがちですが、支援の視点としては、「禁止すること」よりも「続けられる形を一緒に考えること」が重要です。本人が無理なく取り組み、家族も負担になりすぎず支えられること。生活の流れの中に自然に組み込める形で再発予防を生活の中に位置づけていくことで、生活習慣を整えることが生活期の支援では大切になります。

生活習慣を整えることが生活期の支援では大切になります。

Ⅱ期でも大切なのは
「尊厳・生活・家族」を一体で見ること

脳血管疾患の生活期でも、基本になるのは 「尊厳」「生活」「家族」 の視点です。発症後、これまでできていたことが難しくなると、本人は自信を失ったり、意欲が低下したりすることがあります。だからこそ、本人がどのような生活を望み、何を大切にしているかを確認する「尊厳」の視点が欠かせません。生活期では、本人の希望がより見えやすくなる時期でもあります。「また外に出たい」「自分でトイレに行きたい」「家での役割を続けたい」といった思いを、支援の出発点にしていくことが大切です。

「尊厳・生活・家族」を一体で見ること

そして、「生活」の視点では、これまでの暮らしをどう続けるかを考えます。発症前とすべてを同じにすることは難しくても、できる範囲で生活を継続することは可能です。生活習慣、活動、役割、生活リズムをどう維持するかが、生活期の支援の中心になります。できる部分は本人が行い、難しい部分を支えるという考え方は、生活を保つうえでも大切です。

さらに、「家族」の視点も重要です。生活期になると、退院直後の強い不安は少し和らぎますが、介助が長期化し家族の負担が見えにくくなることがあります。夜間対応や見守り、通院、服薬管理など、小さな負担の積み重ねが続き、家族が疲弊していることも少なくありません。また、本人の希望を優先すると家族の負担が増える場合もあり、本人・生活・家族を切り離さず、全体でバランスを考えることが必要です。

脳血管疾患のⅡ期(生活期)では、支援の中心は「生活を継続させること」にあります。活動量を保つこと、生活リズムを整えること、本人にとって意味のある目標を持つこと、社会とのつながりを保つこと。そうした日々の積み重ねが、身体機能の維持や回復を支え、生活の安定にもつながります。

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