入浴の効果と、入浴をサポートする福祉用具

多くの高齢者にとって、入浴は1日のうちで最も大きな楽しみのひとつです。しかし、浴室は滑りやすいなど危険なことも多く、適切な介助が必要です。ケガをさせたり、不快な思いをさせたりする恐れもあるので、つねに安全に配慮し、快適に入浴していただけるように心がけましょう。
目次
- 1)入浴の効果
- 2)入浴介助をサポートする用具
入浴の効果
入浴には、身体を清潔に保つほか、さまざまな効果があります。できるだけ毎日入浴されることをおすすめします。
1.温熱作用により睡眠の質が上がる
入浴すると、毛細血管や皮下の血管が広がり、血流が良くなります。それにより体内の老廃物や疲労物質が除去され、疲れが取れる可能性があります。また、身体をリラックスさせる副交感神経が刺激され、睡眠の質が上がります。
2.水圧作用による心肺機能の向上
お風呂の中で受ける水圧で血行をよくし、心臓の働きを活発にします。また、腹部にかかる水圧が横隔膜を押し上げ、空気を補うために呼吸の回数が増えて心肺機能が高まります。疲れやすい方、心臓の弱い方は、半身浴をおすすめします。
3.浮遊作用によるリラックス効果
湯船に浸かると体重は約9分の1になります。身体を支えている筋肉や関節の緊張がほぐれ、関節痛や肩こりなどがやわらぐ可能性もあります。身体の緊張がほぐれることにより、心までリラックスできます。
4.感染症や褥瘡(床ずれ)を予防
入浴は皮膚についた汚れを落とし、身体を清潔に保ちます。それにより細菌の繁殖を抑え、感染症や、褥瘡(床ずれ)、かぶれなどの発生の予防につながります。
★入浴中に心がけたいこと
1.全身状態を観察する
褥瘡(床ずれ)や湿疹、ケガなどの全身状態を観察できる、よい機会になります。
2.自分でできることはやってもらう
本人ができるところまで手を出してしまいがちですが、できることは自分でやってもらいましょう。ADL(日常生活動作)の維持につながります。
入浴介助をサポートする用具
安全に入浴していただくとともに、介助者の負担を軽減できる用具を揃えておきましょう。
★安全な環境づくりのために
次のように用具を配置しておくと安全に入浴できます。
脱衣所では
- 1.急激な温度変化は心臓に負担がかかるので脱衣所および浴室は22~25℃位に保つ。
- 2.衣服の着脱の際、イスなどを用意して座ってできるようにする。
- 3.落ちた水滴で転倒することもあるのですべりどめマットを敷いておく。
洗い場・浴槽では
- 1.要所に浴槽用手すりをつける。
- 2.浴槽の高さは40センチくらいが出入りしやすい。深さは50~55センチくらいが良い。
- 3.浴槽と同じくらいの高さのシャワーチェアがあると、出入りが楽にできる。
- 4.洗い場にはすべりどめマットを敷く。足を下したときにヒヤッとした冷たさを感じると心臓に負担がかかることもあるので注意!
監修:関西医療学園専門学校 理学療法学科
教員 理学療法士 熊崎 大輔