トイレ介助で配慮するポイント
トイレは介護される人にとってデリケートな部分があるため、プライバシーに配慮し、自尊心を傷つけない行動を取ることが重要です。一方で、介助する人の負担を軽減することも大切です。前回は「車いすからトイレへのスムーズな移乗」について紹介しましたが、今回はトイレ介助のポイントを解説します。
目次
トイレ周辺の環境を整備
まずは安全性を高めるために、トイレとその周辺の環境整備から始めましょう。
1)トイレまでの環境を整備する
自分で歩ける人や介助して歩ける人、車いすで動ける人は、トイレまでスムーズに移動できるよう経路やトイレ周辺の環境を整えましょう。
2)トイレ内の環境を整備する
トイレのなかで立ち座りしやすく、介助もスムーズにできるように環境を整えましょう。
- ●洋式便座に変更
- ●手すりを取り付ける
(片麻痺がある場合は、立ち上がり時に健常側に手すりを設置) - ●スペースがあれば、車いすが入ることができ、横から介助できる空間をつくる
介護保険の住宅改修費について
要支援・要介護認定を受けている人が、手すりの設置など住宅改修する場合、所得に応じて工事費用の7~9割が支給されます。
対象の住宅改修費の上限:20万円(支給額は最大18万円)
★排泄障害とは?
排便や排尿時に、何らかの支障がある症状を「排泄障害」といいます。尿失禁や便秘、下痢などの症状があります。
「尿失禁」……自分の意志と関係なく尿が漏れることです。尿道を締める筋肉が弱くなり、くしゃみなどをしたときに尿漏れが起こる、尿意を感じてからトイレまで間に合わなくて漏れる、また脳に尿意が伝わらずに漏れてしまうなど、尿失禁にもさまざまな原因や種類があります。
「下痢」……神経性やアレルギー性、細菌、薬が原因になるものなど、さまざまな原因があります。それぞれの症状によって対応法がちがいます。
「便秘」……加齢により腸の働きや腹筋が弱くなることで起こります。また、食事や水分、運動不足によって起きやすくなります。
安全とプライバシーに配慮したトイレ介助
1)安全面に配慮する
排泄時、立ち座りの時のふらつきによる転倒を防ぐため、手すりをしっかりと握ってもらい安全を確保しましょう。
2)できるだけ自分でしてもらう
どんな小さなことでも構わないので、できることは自分のペースでしてもらいましょう。
- ●手すりを持って立ち上がってもらう
- ●自分でズボンを上げ下げしてもらう
- ●ウォシュレットを使って洗浄
- ●自分でトイレットペーパーを取ってもらう
※尿もれがある場合も、テープ止め紙おむつではなく、尿とりパッドやパンツ型紙おむつを使って、できるだけトイレを利用してもらいましょう。
3)トイレを急かさない
時間がかかっても急がせるような態度や言葉を出さず、ゆっくりと待ち、無理であれば時間をおいてするようにしましょう。
4)薬を調整する
下痢、便秘などの場合は、医師に相談し、薬を調整しましょう。
★適切に声をかけることが大切
高齢者は加齢とともに尿が近くなり、失禁してしまうことがあります。食事の前や就寝前、お気に入りのテレビ番組が始まる前などに「トイレに行きましょう」と声をかけましょう。
また、毎日同じ時間帯に「そろそろトイレの時間よ」と声をかけてもいいでしょう。
トイレのなかでも「ズボンを下ろしますね」「立ち上がりましょう」と何か動作する前に優しく声をかけて不安をやわらげましょう。
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監修:排泄アドバイザー・福祉用具プランナー
管理指導者 堺谷 珠乃