身体を清潔にする「清拭(せいしき)」
入浴やシャワー浴は、皮膚を清潔に保つために欠かせません。しかし、入浴ができない方は身体を拭いて清潔さを保つことが必要です。このように身体を拭くことを「清拭(せいしき)」と呼びます。清拭(せいしき)は、清潔さを保つだけではなく、血行促進や情緒を安定する効果があります。入浴できないときは清拭(せいしき)をしてあげましょう。
目次
清拭(せいしき)の準備
■用意するもの
- ・汚水用バケツ
- ・洗面器2種(石けん用、拭き取り用)
- ・55℃くらいの熱めのお湯
- ・バスタオル
- ・ビニールシート
- ・タオル数枚
- ・石けん
- ・体温計
- ・必要に応じて手袋、ローションやパウダー、塗り薬、爪切りなど
- ※他に着替えの衣類や、あれば清拭(せいしき)剤を用意
★清拭(せいしき)の注意点
- ・食事前後1時間や、リハビリ後などで体力が消耗している時間帯は避けましょう。
- ・体温を計り、体調を確認します。
- ・体調がすぐれない場合は部分的な清拭(せいしき)に切り替えましょう。
- ・寒さを感じないように、上半身と下半身で分けて行います。
- ・衣服を脱がせた後は、タオルケットやバスタオルで覆います。
- ・皮膚の弱い方や、むくんでいる方は、強くこすらないように注意しましょう。
- ・乾燥や発赤、むくみや褥瘡がないかなど、皮膚の状態を観察します。
- ・できるだけ暖かい昼間に行うか、室内を暖めます。
- ・濡れたタオルで拭いた後は、すぐに乾いたタオルで拭き取ります。
清拭(せいしき)の手順
■清拭(せいしき)を行う前に
- ・熱いお湯にタオルを浸した後、固くしぼります。水分が残っていると、皮膚に水分がつき身体の熱が奪われます。
- ・タオルを自分の身体に当てて熱さを確認します。
- ・「今から身体を拭きますね」と声をかけましょう。
■清拭(せいしき)の手順
清拭(せいしき)は上半身から下半身、そして陰部の順に拭きます。
顔 → 首 → 腕・手 → 胸 → 腹 → 背中 → 腰 → 両足 → 陰部
1.顔と首
はじめに顔を拭きましょう。できれば顔専用タオルを使いましょう。
目は、目頭から目尻に向かって、やさしく拭きます。次に額を拭いた後、鼻から頬に向かって拭いていきます。
2.腕・手
腕を持ち、手首から腕に向かって拭きます。指の間や脇の下もていねいに拭きます。
3.胸・腹
胸は鎖骨に沿って、円を描くように拭きます。
お腹は、おへそまわりから円を描くように拭きます。
女性は胸の下に汚れがつきやすいので念入りに。腰が曲がっている方は、お腹に汚れが溜まりやすいのでていねいに拭きましょう。
4.背中・腰・お尻
体位変換し、腰から背中に向かって拭いていきます。
お尻は衣類をずらし、円を描きながら拭きます。お尻は褥瘡ができやすいので、血行を促進するためにやさしく拭きましょう。
★上半身を拭き終えたら衣類を着せて、下半身の衣類を脱がせます。
5.足
膝を片足ずつ曲げて、足首から太ももに向けて拭いていきます。次に、くるぶしやかかとを拭き、足の裏や足の指の間を拭きます。かかとは褥瘡ができやすいので、ゆっくりと拭きましょう。
6.陰部・肛門
陰部専用タオルを使い、男性・女性ともに陰部から肛門の順で拭いていきます。男性は陰茎のしわを伸ばして拭きます。女性は汚れがたまりやすい大陰唇・小陰唇を中心に拭いていきます。
《念入りに拭きたい部分》
・耳のうしろ・首まわり・脇の下
・お腹のしわ・おへそまわり
・太ももの付け根
・ひざの裏・足の裏
・お尻・陰部
■清拭(せいしき)後の手順
- ・塗り薬や保湿液などが必要な場合は塗布します。
- ・衣類を着せます。衣類のシワは褥瘡の原因になるため、背中や脇のシワを伸ばしましょう。
★清拭(せいしき)の効果
- ・皮膚の汚れを取る
- ・温かいタオルで拭いて血行を促進
- ・感染症予防につながる
- ・気分転換による精神安定の効果
- ・褥瘡やケガ、赤みなどの発見につながる
- ・身体のかゆみを取り、イライラを解消
- ・手足を動かしてもらい関節が硬くなることを防止
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監修:関西医療学園専門学校 理学療法学科教員
理学療法士 熊崎 大輔